GDPR、改正電気通信事業法、改正個人情報保護法など、個人情報のプライバシー規制が厳格化しており、Cookie利用に対する規制も強まっています。
Cookieに頼らない、または使用しないという方法論は、Cookieレスと呼ばれていますが、グローバル企業やコンプライアンスを重視する大企業、中央官公庁などは、現在、その対応を迫られている状況にあります。
では、Cookieに依存せず、マーケティングを実現するには、どのような方法があるのでしょうか。
この記事では、Cookieレスの出現の背景やその重要性、およびWebを通じた情報収集やその解析が、今後受ける影響について考察します。
Cookieレスとは?どんな対応が必要?
一般的にCookieの利用規制やそれが推進される動きをCookieレスと呼びます。
また、Cookieレスは、プライバシーの保護を促進する社会的なトレンドや「Cookieに依存しない、もしくはCookieを使用しないシステム」という文脈で使われるケースもあります。
Cookieレスが進む背景
インターネットによる情報共有やデータの収集・分析などは急速に発展しており、便利なアプリやビジネスに欠かせないプラットフォームも数多く存在しています。
これまでのCookieの利用においては、ユーザ本人が知らないうちにCookieを付与され、複数の企業間でその情報が共有されているケースも多々ありました。
そのような中で、サービスを利用するユーザの情報を厳格に管理し、プライバシーを保護するための法制度が、世界中で次々と整備されています。
また、最近では、ショッピングカート内の商品の維持など、システムの利用にあたり必須であるCookie、いわゆる「必須Cookie」と分析やトラッキング、広告のターゲティングに利用されているCookie、いわゆる「トラッキングCookie」を用語で明確に区別する動きも出てきました。
とくに後者、トラッキングや広告のターゲティング目的に利用されているCookieについては、企業がユーザのプライバシーに適切に配慮し、法令を遵守することで、ユーザが安心してインターネットを利用できる環境を如何に実現するかが、現在、大きな課題となっています。それらを実現する方法論のひとつとして、Cookieレスという考え方が登場したと考えられます。
トラッキング規制の背景は以下の記事で詳解しています。合わせてご参考下さい。
【関連記事】:サードパーティクッキーとは?その仕組みと規制、企業に求められる対応を徹底解説
Cookieレスの広がり
Cookieレスは、「レス」とは言うものの、全てのCookieがデータ収集に活用できなくなるわけではありません。
3rdパーティCookieと呼ばれている、サービス提供事業者以外が発行するCookieは、事実上の廃止と言える状況ですが、その一方で、1stパーティクッキーは規制を受けながらも、まだ一定の活用ができる状況にあります。また、最近では、Cookieに替わる新たなソリューションを提案するサービスも次々に登場しています。
確実に言えることは、今後は、自社が展開する事業やサービスの地政学的な提供エリアや収集しているデータがどの国に由来しているのか、といったデータの発生源をきちんと認識する視点が、マーケティング活動を行う上で、企業側にますます求められるようになってくるでしょう。
その上で、法令を遵守しCookieを活用する、あるいはCookieレスを選択する、といった判断を企業が根拠をもって適切に行うことが重要です。
Cookieをデータ収集に使用しない、いわゆるCookieレスは、世界的なプライバシー保護の気運も相まって、今後ますます広がりを見せる可能性があります。
Cookieレス時代を企業はどのように捉えるか
Cookieレスによって、ユーザのプライバシーが守られることは、社会全体としてはむしろ喜ばしいことです。企業側にとってもユーザのプライバシー保護は、最も重要な課題のひとつとして考えるべきことでしょう。
しかし、現在は、Cookieレスを含め、データ活用とプライバシー保護の最適解を模索している過渡期であり、Cookieレスにはさまざまな課題やリスクがあることもまた事実です。
Cookieレスによる企業のマーケティング課題
Webを通じたマーケティングやサービス提供をしている企業では、Cookieレスの進展に伴い、主に下記の課題が考えられます。
・ユーザの行動補足や分析が困難になる
Cookieの利用を前提としたアクセス解析は、実装の容易さや精度の高さ、コストの低さなど企業にとって非常に使いやすいものでした。しかし、Cookieレス時代では別の方法で情報収集を検討しなければならず、そのためには多くの専門知識が必要になります。
・広告効果の低下
ユーザの行動を高精度で把握できていれば、そのユーザに合わせたターゲティング広告の表示が容易に行なえます。ユーザ分析の精度が低下することでターゲティング広告がユーザにマッチし辛くなり、広告効果の低下が懸念されます。
・Webサイトの最適化が困難になり、コンバージョン率が低下
コンバージョン率を向上させるために、自社のWebサイトを閲覧したユーザがどのような行動をとり、どのような場合に離脱するのか、といった観点での分析は極めて重要です。
ユーザの正確な行動情報を得られなければ、精度の高い分析や予測は難しくなり、コンバージョン率が低下する恐れがあります。
Cookieレスによるユーザ視点の課題
次にユーザ側の視点に立ってみると、Webサービスの利用にあたり、いわゆる顧客体験の品質が低下することが懸念されます。
・パーソナライズ化コンテンツの精度の低下
従来は、ユーザの属性に合わせてコンテンツをパーソナライズ化することで、ユーザが興味を持ちやすい情報を提供することが可能でした。
Cookieレスにより属性を正しく識別することができなければ、ユーザにとってメリットの薄いコンテンツが表示されてしまう可能性があります。
・新たな商品やサービスに偶然出会う機会(セレンディピティ)の低下や喪失
ユーザが興味を持ちやすい分野を把握できていれば、ユーザ自身も知らなかった商品やサービスをWebサイト側から紹介することができます。
Cookieレスによりどのような分野の情報を提供すればよいのかが曖昧になることで、ユーザにとって興味のない情報提供が増加してしまう可能性が高まります。
・顧客体験の品質の低下
上述のような課題によって、「ユーザが感じる体験の質」が低下すると考えられます。Webサイトが提供するサービスやコンテンツに対する期待値が低くなり、顧客が離れ、離脱率が増加する可能性があります。これにより、Webサイトへの流入や利用頻度が減ってしまう恐れがあります。
Cookieレスの進展により、企業はユーザの行動を把握することがますます難しくなり、結果として、ユーザの満足度が低下することが懸念されます。
Cookieを使わないWebマーケティングのトレンドについては、以下の記事で詳解しています。
合わせてご参考下さい。
【関連記事】:Cookieレス時代の到来?Cookieを使わないWebマーケティングとは?
Cookieレス時代の情報収集
前述の課題に対して、どのような対策が考えられるでしょうか。
Cookieレスの時代においても、有効と考えられる情報収集について紹介します。
規制影響の少ない1stパーティCookie
1stパーティCookieは、ユーザが直接訪れたウェブサイトから発行されます。3rdパーティCookieは、ブラウザにより即時破棄やデータの保持期間を極端に短く設定される現状もあり、活用が難しい状態です。
1stパーティCookieを活用することで、規制の影響を少なくすることに繋がります。
ブラウザ規制の影響を受けないサーバーサイドCookie
サーバーサイドCookieを利用することも有効です。サーバーサイドCookieは、いわゆる必須Cookieであることが多いため、規制の影響が少ない状態で利用できます。
SafariやFirefox、Chromeといった主要ブラウザは、3rdパーティCookieの利用に対して厳しい規制を設けており、事実上の廃止と言える状態です。そのため、規制の影響が少ない1stパーティCookieの活用は有効なアプローチのひとつと言えます。
Webビーコン以外のアクセス解析
一般的に活用されているWebビーコン型のアクセス解析は、トラッキングCookieを活用しており、規制の影響を強く受けます。
ビーコンのドメインと解析対象のWebサイトのドメインを、DNSを用いて別名(CNAME)で名前解決処理する手法(CNAMEクローキング)も数年前に有効な解決策として一時期話題になりました。しかし、主要ブラウザ各社の規制は、これらの抜け穴をことごとく塞いできており、現在では、自社管理のドメイン名でタグサーバを運用する以外に解決策がない状況に至っています。
Webビーコン以外の選択肢として、サーバーログやパケットを分析する手法を検討することも、現在では有効な手法のひとつです。自社のリソースであるWebサーバやクライアントとの直接的な通信内容であるパケットを活用するため、柔軟な情報収集・分析を期待できるでしょう。Cookieレスの時代に見合った適切な手法を選択することで、従来と遜色のないレベルの情報収集を実現できる可能性があります。
Cookieの代替技術については、以下の記事で詳解しています。合わせてご参考下さい。
【関連記事】:Cookie活用に大きな制限が掛かる今、知っておきたい代替技術を解説!
RTmetricsはCookieレスに完全対応!
Cookieレスは、個人情報を守るために極めて重要な考え方です。
ユーザデータの収集や分析は、企業の競争優位性を維持・向上するために欠かせませんが、Cookieレスの時代の流れも受け入れた上で、課題に対応する必要があります。
前述した考え方や対策を実施するには、多くの工数や一定のコストが必要であり、場合によっては法的知識も要求されます。
RTmetricsは、標準機能でCookieレスのデータ収集の運用基盤を構築できるWebアクセス解析ツールです。サイト側に特別な対応は不要で、RTmetrics上の設定のみで実装をシンプルに完結することができます。
Webアクセス解析に必要な機能は、製品内で全て用意されているため、企業の負担を抑えながらCookieレスの分析基盤をどなたでも簡単に構築・運用することが可能です。