2024年、サードパーティクッキー(3rd party cookie)に対する主要ブラウザ各社によるベンダー規制は、ひとつの転換点を迎えます。Chromeにおいてもサードパーティークッキーの全面排除が始まることから、今後は実質的な活用が不可能になるとの見方が大勢を占めています。
ユーザのプライバシー保護を目的としたCookie規制には、法律による規制と主要ブラウザ各社によるベンダー規制の2つの側面があります。特に法規制への対応については、マーケティング部門やシステム部門のみならず、法務を含む企業内の複数の部門にまたがって対応する必要があり、しかるべき部門がイニシアティブをとらないと対応が後手に回ってしまい、法令違反のリスクを負うことになりかねないため、注意が必要です。
ビジネスにおいて、Webマーケティングが重要な取組みのひとつであることには変わりなく、企業はいかに影響を抑えた持続可能な仕組みを構築し、運用するか、マーケティングに活用するデータ戦略の転換が迫られていると言えます。
この記事では、サードパーティクッキー規制が最終段階を迎える2024年、どのような代替手段が考えられるのか、企業はクッキーレス時代とどのように向き合えばよいのかを見ていきます。
サードパーティクッキー規制による影響
主要ブラウザ各社によるサードパーティクッキー規制の影響で、現在では従来のようなWebマーケティングをそのまま実現することは困難になってきています。
2024年、サードパーティクッキーの規制は市場のスタンダードに
サードパーティクッキーの規制は、2017年にAppleの主導で始まりましたが、今や主要ブラウザ各社に広がりを見せています。そのため、サードパーティクッキーの規制はいちメーカーのブラウザの仕様ではなく、マーケットのスタンダードと言える仕様になりました。
2017年、AppleがITPの実装を開始した当初、現在のような業界標準になると予測した人は、ごく少数派だったと思います。これらは、「反トラッキングポリシー」として、トラッキングを目的としたクッキーを規制のターゲットにした仕様です。
GDPRの施行後、世界各国でも同様のプライバシー保護関連の法律が制定、施行されたことを背景に同様の仕様の実装はブラウザにとどまらず急速に広がりを見せています。
・Safari
2017年にサードパーティクッキーの有効期限の制限(24時間)を開始、2020年にサードパーティクッキーの全ブロックを実装
・Firefox
2019年にサードパーティクッキーのブロックがデフォルトの設定に、2022年に「Total Cookie Protection(包括的Cookie保護)」がデフォルトの設定に
・Chrome
2021年サードパーティクッキーを段階的に廃止すると発表、その後、何度かの延期を経て、2024末までにサードパーティクッキーを全面的に廃止すると発表
プラットフォーマーでもあり、サードパーティクッキーの恩恵をこれまで大いに受けてきたGoogleの動きが一番遅れをとっていますが、各国の法制度が包囲網となり、ユーザのプライバシーやデータ保護への関心の高まりがマーケットのパラダイムシフトを生み出したと言えるでしょう。
ユーザをトラッキングから保護する設定がデフォルトに
これまで、サードパーティクッキーは、Webを通じた情報収集やターゲティングにおいて重要な役割を果たしてきました。サードパーティクッキーが広範囲な情報収集を可能としていた特性として、「ドメインを跨いだトラッキングや計測」が挙げられます。
ユーザが自社のWebサイト以外のドメインで起こした行動を、サードパーティクッキーを用いてトラッキングし、その情報を活用することで柔軟なアクセス解析やユーザ分析、ターゲティングやリターゲティング広告を実現していました。
そのような中、Firefoxが2022年にリリースした「Total Cookie Protection(包括的Cookie保護)」は、「クッキーを発行したサイトだけがそのクッキーを利用できるようにする」という考え方に基づいて設計・実装されています。
これは、「ユーザの行動をドメインを跨いでトラッキングすることを目的としたクッキーを排除する」というマーケットのトレンドを体現しています。必須Cookieや厳密に必要なCookie(Strictly Necessary Cookies)を生かしたWebマーケティングの重要性が増している、とも言い換えられるでしょう。
トラッキングブロックの設定はアプリやモバイル広告にも波及
スマートフォンに用いられている主要なOSに、AppleのiOS、GoogleのAndroidがあります。各OSでは、端末固有のIDが付与されており、iOSのIDは「IDFA(Identifier for Advertisers)」、AndroidのIDは「GAID(Google Advertising ID)」と言います。
これらは主に広告主向けにCookieとはまた異なるユーザ識別子として提供され、マーケティング目的でのユーザ分析、アトリビューションの計測や広告のパーソナライズ化等の機能を提供し、長らくモバイル広告におけるエコシステムを形成してきました。
ドメインを跨いだトラッキングを担ってきたのがサードパーティクッキーだとすれば、モバイルアプリを跨いだトラッキングを担ってきたのがこれらのモバイル広告IDだと言えます。これらのIDは、Cookieと同様、個人は特定できないがユーザを識別できる固有のIDであり、GDPRで定義されている「個人データ」に該当します。
また、モバイル広告IDは、OS単位で付与されている端末固有のIDであるため、ブラウザ単位で付与されるCookie以上に個人の識別性が高いIDであることが特徴です。各ベンダーは、モバイル広告IDを以下のとおり規制対象に追加しました。
・Apple(IDFA)
2020年9月にリリースされたiOS14より、アプリ毎にIDFAの取得可否をユーザに確認する仕様に変更され、ID取得の可否はユーザのオプトインが必須となる仕様となりました。
・Google(GAID)
2024年末までにGAIDを廃止すると発表。(サードパーティクッキーの廃止と同じ時期になると想定される)
広告業界を震撼させた仕様変更は、個人データがGDPR等の法律で保護対象として定義されているため、法制度に追従して各ベンダーが規制対象とした、というのが実態と考えられます。Webマーケティングを行う上で極めて重要な仕組みであるサードパーティクッキーとモバイル広告IDが規制された現在、新たなデータ活用やマーケティング戦略を再構築している段階と言えるでしょう。
サードパーティクッキーの規制については、以下の記事でも詳解しています。
合わせてご参照下さい。
【関連記事】:サードパーティクッキーは事実上の廃止?現状と今後の対応を解説!
サードパーティクッキーの代替手段
サードパーティクッキーの活用が困難となった今、どのような代替手段があるのでしょうか。
ゼロパーティデータの活用
ゼロパーティデータとはユーザが自発的に共有する情報のことを指します。この方法では、企業が提供するアンケートや登録フォームを通じて、直接ユーザからデータを収集します。このアプローチはユーザの同意に基づいた参加や情報提供であるため、プライバシーに配慮しつつ精度の高いデータを得ることが可能です。
コンテキストターゲティング
コンテキストターゲティングは、ユーザの行動ではなく、閲覧しているコンテンツの内容に基づいて広告を配信する手法です。近年はAIの進歩が目覚ましく、表示中のコンテンツをAIが分析し、そのコンテキスト(文脈)に沿った広告を表示することが可能になっています。
共通ID
メールアドレスやIPアドレスから生成した特定のIDをユーザに付与し、そのIDに対して情報の蓄積やターゲティングを行う仕組みです。共通IDにはメールアドレスのようにユーザ固定情報から生成する「確定ID」、IPアドレスのように変動の可能性がある「類推ID」が存在します。
確定IDはユーザの識別を高精度で行えますが、メールアドレスなどの情報を提供してもらわなければなりません。一方、類推IDは容易に収集できますが、あくまでも「同一ユーザと思われる」範囲でユーザを識別します。
共通IDは、そのIDを利用するプラットフォーム上で利用することが可能なため、サードパーティクッキーほど自由に扱えるわけではありませんが、サードパーティクッキーの代替手段として注目されています。
ただし、確定IDおよび類推IDともに、共通IDはGDPRでいう「個人データ」に該当するため、利用にあたりユーザの同意が必須となる点に注意が必要です。
Cookieレスのアクセス解析サービス
サードパーティクッキーに依存しないアクセス解析サービスも存在しています。ファーストパーティクッキーやWebサーバーのログ、パケットデータを分析することで高精度なアクセス解析が可能です。ユーザのプライバシーを尊重しながら、企業が必要とするWebマーケティングの成果を見込むことができます。
サードパーティクッキーの代替手段は、プライバシーとユーザエクスペリエンスのバランスを考慮しつつ、サードパーティクッキーが実現していたレベルと同等のWebサイトの効果測定やターゲティング広告の実現を目指しています。
新しい手法であるため、情報がまだ多くなく、これらの新しい手法を検討するにあたっては、サンドボックスの活用など、可能な限りメリット・デメリットを自社で適切に評価することが重要です。Webサイト運営者としてユーザのプライバシーを尊重しつつ、効果的なオンライン戦略の展開を目指すことが大切です。
Cookieの代替技術については以下の記事でも詳解しています。合わせてご参考下さい。
【関連記事】:Cookie活用に大きな制限が掛かる今、知っておきたい代替技術を解説!
従来の手法に固執せず、最適な方法を模索することが大切
従来のWebマーケティングの根幹的な機能を担ってきたサードパーティクッキーは、各国のプライバシー関連法の施行と強化、ユーザのプライバシー保護意識の広がり、ブラウザやモバイルOSの各ベンダーによるプライバシー関連法規の遵守を目的としたCookie規制やモバイル広告ID規制の強化など、厳しい状況に置かれています。
これらの流れが今後逆行することはほぼ確実にないため、「サードパーティクッキーによるWebマーケティングの延命」ではなく、「サードパーティクッキーに頼らないマーケティング手法の構築」という視点で情報収集と評価・検証を行い、自社のWebマーケティング戦略を再構築する取り組みの実行が必要とされています。
RTmetricsは、サードパーティクッキーを使用せず、ファーストパーティクッキーやWebサーバーログ、パケットキャプチャを活用したアクセス解析ツールです。トラッキングCookieは一切使用せず、Webサイト側が発行するいわゆる「必須Cookie」を活用した実装でWebマーケティングに役立つWebサイトのアクセス解析のレポートやユーザの行動データを生成します。
新しい技術ではなく20年以上前から提供されている安定した技術ですので、リスクなく安心してご利用頂けます。
マーケットのトレンドの急激な変化にこれ以上振り回されたくない方、持続可能な仕組みの構築・維持に不安をお持ちの方は、ぜひRTmetricsをご検討ください。